台湾独立建国聯盟日本本部 林省吾
8月7日〜9日に訪台した麻生太郎自民党副総裁は、「お金をかけて防衛力を持っているだけではだめで、いざとなったら台湾防衛のために使うという意志が必要」「日本、台湾、米国をはじめとした有志国は強い抑止力を機能させる覚悟が求められている。戦う覚悟だ」と発言し、物議を醸した。
実に面白いのは、中国外交部の報道官より真っ先に批判の先陣を切ったのが日本の親中メディアと政治屋達だったことだ。どうやら「戦う覚悟」の4文字が気に入らないらしい。「失言」「中国に対する挑発だ」「台湾もいい迷惑だと思う」など、発言した人の名前を伏せたら、中国政府のプロパガンダにしか聞こえない。
まずは台湾人として言っておく。迷惑のわけがない。やっと日本の政治家の口から、日本は台湾有事の当事者であることを意識した発言を聞けて、むしろ大歓迎だ。ただ、筆者は問いたい。日本は抑止力を行使する準備をできているのか?
麻生副総裁の発言は一種の牽制球である。牽制の対象は三つある。
一つ目はもちろん中国。中国の台湾侵攻に対し、日米は黙って見殺しするわけがないと明言し、自重しろと牽制した。
二つ目の対象は台湾。麻生副総裁はメディアに対しこうも述べた。「(台湾の総統選後に)急に中国と手を組んでもうけ話に走ると、台湾の存在が危なくなる。選挙結果は日本にとっても極めて大きな影響が出る」。日本とアメリカが一番恐れるのは台湾に再び親中政権が誕生すること。日米が台湾海峡の平和を維持する決意を明言した今、当の台湾人には台湾を守る決意があるのか? 日本とアメリカはそれを知りたがっている。
麻生副総裁が牽制した三つ目の対象は、実は日本だ。防衛力は使う覚悟があるからこそ抑止力になる。残念ながら、防衛力の使用方法はまさに今の日本の課題。中国が尖閣界隈に挑発を繰り返すのも、日本は簡単に手を出せないことを知っているから。個別自衛権の行使さえ躊躇するなら、集団自衛権の行使は考えられない。実際、日台の間には安保条約がない。現時点では台湾有事の際に自衛隊はせいぜい米軍の後方支援しかできず、麻生副総裁が言う台湾防衛はおろか、台湾や台湾に近い先島諸島にいる日本国民さえ守れないのが事実だ。真の抑止力を手に入れたいなら、至急日米台三か国の安保対話を行うべきだ。
Freedom is not free、自由は犠牲なくして手に入れることはできない。専守防衛にも「戦う覚悟」が必要だ。東アジアの安全を脅かしているのは最初から中国である。挑発してきたのも中国である。それなのになぜ日本の国会議員とメディアは中国に忖度するのか理解に苦しむ。裏の事情はさておき、彼らの言動を見れば、日本より中国の利益を優先しているのは明らかではないか。
筆者は既に来年1月の台湾行き航空券を用意した。一台湾人として台湾を侵略者の手から守るべく、台湾に戻って一票を投じたい。日本国民を守るべきなのは、政府だけではなく、日本国民自身でもある。皆様と共に東アジアの平和に尽力したいと切に願う。