台南市政府は2018年に開館した「王育徳紀念館」の関連事業として、2020年12月に王育徳氏を主人公にした児童書を出版した(著者:陳玉金、挿絵:蔡達源、台湾語訳:呂美親)。QRコードから台湾語のナレーションを聞けるように工夫されている。
「若者たちに自分の、自分に勇気を与える物語を!」
呂美親 台湾師範大学助理教授
(本書台湾語翻訳担当)
世界中の国々がパンデミックを経験した2020年は、身体や精神力を試され、国家の意義やグロバール化の限界についても試された年でした。目に見えない災難はいつか去っていきますが、様々な形ある抑圧は、皮膚の色、民族や国家の形に関わらず各地で絶えず起こっています。
私は日本に留学した最後の二年目に、台南市文化局に『漂泊的民族 王育德選集』(2017出版)の編集と翻訳を依頼されました。そのおかげで、強権に反抗し、台湾人の様々な「人権」のために、生涯をかけて努力してきた賢人である王育徳先生のことをより深く理解することができました。人権には様々な種類の権利があります。個人的な意味では、例えば自分の母語を話し、書く権利、自分の考えを持つ権利があり、一つの集団としての意味では、自分の歴史を知る権利、自由に言論を発表する権利、デモクラシーを求める権利などがあります。また、圧制者に非情なまでに抑圧された際に、弱者たちも平等的な権益を追求する権利があります。
時代ごとにそれぞれの苦境があるものの、様々な災難や逆境に直面する際に、どのように乗り換えて克服していくかは、その時代の人々の知恵や辛抱強さによるものです。強権と抑圧がまだ存在している時代に、王育徳先生が成し遂げた多くの事業や、彼が私たちのために範を示した「人」の有様などは、依然として私たちに多くを教え、勇気や力を与えていると思うのです。
一冊の絵本で語られることは限られていますが、絵のなかにある多くの手がかりを通じて、この若くして台湾を離れ、生涯をかけて故郷台湾の行き先を開拓し、案じてくれた人をもっと知ることができるでしょう。王育徳先生が最も知られているのは台湾語研究での成果なので、この絵本の台湾語翻訳を担当できて、とても光栄に思っています。そしてまた、多くの読者が台湾語文を読み、もう少し自分の母語に愛情をかけてくれるよう願いながら、もらった勇気を力に転化し、母語の権利を求め続けようと願っています。