2月24日日曜日の午後、東京のアルカディア市ヶ谷(私学会館)で、「台湾2・28時局講演会-馬英九が目論む2・28事件の風化!」が行われた。主催は、台湾独立建国聯盟日本本部。
黙祷の後、王明理委員長が、チベット人の焼身自殺についても触れながら、今回の趣旨を説明した。また司会(柚原正敬・日本李登輝友の会事務局長)が大江康弘・参議院議員(現在自民党と合同会派)からの電報を紹介した。
基調講演を行った蕭錦文氏は、日本軍に志願して、出征先で目にした植民地の状況と、日本統治下の台湾を比べ、台湾の教育の充実に感謝の気持ちを持ったと語った。
≪228事件に関連して、日本との戦争に勝ったのは米国であって中国ではないのに、また台湾を制圧したわけでもない国民党政府が、連合国軍の指令により台湾を占領し、日本統治時代より、もっともっと悪辣な厳しい政治を行った。陳儀が、228事件処理委員会を騙して、他方で援軍を呼び、その援軍が上陸と同時に、路上にいた台湾人を殺戮した。
自分は、義父が逮捕される前に逃げたため、その代わりに逮捕され、タオルを顔の上にかけて、上から水を流し、失神させるという「水かけ刑」という拷問を受け、最後には死刑場に行くトラックに乗せられたが、228事件処理に関して現地調査に台湾にやってきた白崇禧国防部長の指示で殺されずに済んだ。拷問を受けているときに「ビルマ戦線で華々しく散ってしまえば、こんな惨めな目に遭わずに済んだのに」という思いが巡った。≫
蕭氏はまた、228事件は、文化の低い民族が文化の高い民族を支配するという矛盾がもたらしたと説明。さらに、今の国民党の「ひどい」政治、陳水扁前大統領が監禁されている理由について、「国民党は台湾人に政権を渡したことが悔しかった」からその仕返しだと分析。日本に対して、先の戦争はアジアに貢献した。「戦争についての日本の教育を変えてほしい」とし、自虐史観ではなく、正しい歴史観を持つように求めた。
引き続いて行われた「中国の覇権主義にどう立ち向かうか」と題したパネルディスカッションは、黄文雄・前委員長の司会のもとで、ペマ・ギャルポ氏(チベット文化研究所名誉所長)、イリハム・マハムティ氏(日本ウイグル協会会長)、オルホノド・ダイチン氏(モンゴル自由連盟党幹事長)も加わって行われた。
イリハム氏は、228事件と東トルキスタンのウイグル人が経験したことの共通点について、「国民党も中国共産党も、ある民族を支配しようとするときにその民族の知識人を殺す」と指摘。また、基調講演で蕭氏が「今の(馬英九)政権は中国に偏っているものの、まだ中国に渡すにいたっていない」と分析した点について、台湾でメディアの独占状態が危惧されている点に言及し、「メディアを封じることで、圧迫を受けている民族の声が世界に伝わらなくさせる」と、ウイグル人が経験した中国人の迫害の手法を紹介し、厳しい見方を示した。
ペマ氏は、チベット人はいまでもたくさんの人々が中国政府によって政治犯として収容されている。中国は長い間、多民族国家であると言っていたが、1年前から、ほかの民族を、「中華民族」の統一の妨害だ、と言うようになってきた、と紹介。仏教の考えかたからすれば、チベット人にも半分の責任がある。それは、中国を信用し、協定を結んだこと、内部分裂によって侵略を許したこと、独立を放棄したことだと振り返り、「中国にいかなる正当性も与えてはならない。連帯を組んで中国と対抗することが必要だ」と呼びかけた。
また「中華4000年」「中華民族」など存在しない、言語や歴史を共有しているのが民族なのだ、とNHKの報道姿勢 へ抗議をした。
ダイチン氏は、「チベット人、ウイグル人に起こっていることは、モンゴル人にも起こっている」とし、「戦っているときよりも、平和なときにたくさん殺された」と、中国による侵略・民族抹殺について告発した。また、宗教の自由があるというのは建前で、実際にはその自由がないとい う状況を報告した。
質疑応答では、「どの国のパスポートで日本へきているのか」という質問もあった。中国の支配を受けている、いずれの民族も、最初に外国へ行く際は、中国パスポートということになるが、チベット人の場合は、インド発行の難民パスポートがある。またウイグル人とモンゴル人の場合は、漢民族ならすぐ取れる中国のパスポートも、ウイグルやモンゴル人の場合は、政治思想についての調査が行われるため、パスポートの審査に長い期間がかかり、発給されない ケースもあるという。
イリハム氏とダイチン氏は、中共のパスポートで出国し、来日したあと、イリハム氏は日本国籍を取得した。ダイン氏は、日本政府に難民申請をしているが4年にわたり却下され、今はパスポートがない状態であるという。
また蕭氏は、台湾の状況について、中国人による教育のせいで、お金さえあればOKと考えるようになってしまった、と憂いた。
閉会挨拶に立った林建良・中央委員は、日本に対し日本版「台湾関係法」の制定を求め、一日も早くこのような会を開かないで済むようにしたいと述べ、2月28日を台湾の建国記念日として祝えるようにしたいと訴えた。
会場では、蕭氏が日本語に翻訳した李筱峰原著『二二八事件の真相』(日本では日本李登輝友の会が取り扱い)、および林建良著『中国ガン』(並木書店)のサイン会も行われた。
「228事件の風化」の告発については、あまり掘り下げることが出来なかったが、200名分の席が満席になるこれまでにない注目の高さだった。また、当日、蕭氏へのプレゼントが、車のトランクに入りきらないくらい寄せられた。
また会場には、門脇朝秀・あけぼの会代表、小田村四郎・日本李登輝友の会会長をはじめとする長老から、吉田康一郎・元都議会議員をはじめとする若手の姿も見えた。